2度、リードされながら追いつき、勝ち点を手にした日本。本田の同点ゴールは交代出場から6分後のことだった

■グループステージ第2戦
日本 2-2 セネガル
得点:(日)乾、本田
   (セ)マネ、ワゲ

ブレなかった西野采配

 日本は攻めた。守りに入らずに、攻めた。そのうえで手にした勝ち点1は大きい。

 攻めの姿勢は随所に表れた。まず先発メンバー。コロンビア戦と同じ顔触れは、西野朗監督がポゼッションに適したと話す人材、香川真司、柴崎岳、乾貴士の3人がいることが胆だった。戦前から指揮官は「素早いパス回し」をセネガル攻略のポイントに挙げていたが、人選がそれを示していた。
 
 ただし、狙いが形になるのは失点後のことだった。

 試合開始直後から相手の圧力に押され、右SBワゲのクロスの処理が甘くなったところを突かれてしまう。ユスフ・サバリに至近距離からシュートを打たれ、GK川島永嗣のパンチングミスにより弾いたボールがサディオ・マネに当たってゴールに吸い込まれる。先制を許した。
 川島は「(1失点目は)完全に自分のミスです。目の前のところが気になりすぎてしまったので」と振り返ったが、ミスがらみの失点は日本にとって痛かった。

 だが、セネガルが得点したことがチームの重心を下げ、日本の狙いである『素早いパス回し』が可能になる。香川が巧みにマーカーであるアルフレッド・エンディアイエの監視を逃れてビルドアップに関与し、柴崎が縦パスを打ち込み、最終ラインの裏を突いた。中盤のユニットで相手の陣形を揺さぶると、34分に日本に得点が生まれる。

「練習からずっと言ってましたね。こっちを見てくれと。(相手SBワゲの)裏は絶対に突けるから」(長友佑都)

 右サイドの柴崎岳から左サイドでフリーになっていた長友へサイドを変えるミドルパスが送られる。少し前方にズレたが「体幹で強引に(ボールを)ねじ伏せた」長友がカットインして乾にパス。すると乾はエリア左角付近から中へスライドしつつ、得意の場所へと到達。迷わず右足を振りぬき、相手GKの届かない場所へシュートを決めた。

「僕の形というか、先の試合(パラグアイ戦)でもああいう形で決められていたので、どこかでああいうシュートを打ちたいと思っていた。思い切って打ったシュートがゴールにつながってよかったなと思います」(乾)

 日本は意図のある攻撃で前半のうちに同点に追いついた。パスワークで崩したこともさることながら、スカウティングでセネガルのサイドバックの裏が空くという穴をつかんでいたことも大きかった。

本田はW杯に愛された男(長友)

 前半のスタッツでは、日本が57%とポゼッション(ボール保持率)で上回った。先制点を記録した相手が『守ってカウンター』を選択していたこともあるが、日本のパスワークが生きた一つの証左だ。西野監督がハーフタイムの選手たちの様子を明かしている。

「選手たちは非常に自信に満ちていた。ボールをしっかり動かせる。そのうえでチャンスも取れている。非常にポジティブでした」

 同点に追いつかれたセネガルはボール保持率を高め、攻勢を強めていったが、日本もパスワークとライン間を狙う位置取りで対抗。61分には柴崎のクロスに大迫勇也が飛び込み、あわやのシーンをつくる。その3分後にも乾が得意の角度から再びシュートを放つが、クロスバーに嫌われた。

 まさに一進一退。互いに譲らぬ攻防が繰り広げられる。ただ、好機に決め切れないチームにやがてピンチは訪れるもの。71分、マネの浮き球パスをエリア左で受けたサバリが速く低いクロスをゴール前に入れると、逆サイドから乾のマークを振り切って突っ込んできた右SBのワゲがシュート。日本は再びリードを許してしまった。

 2度目のビハインド。だが、ここからの日本の対応は迅速だった。失点後、すぐに指揮官が動く。72分に香川に代えて本田圭佑を投入。75分には原口元気に代えて岡崎慎司をピッチに送り出した。消耗激しい2人をフレッシュな2人に代えて、再び攻勢を強める算段だった。

 そして指揮官の狙いは当たる。78分、右サイドから大迫が送ったクロスは岡崎に合わずにエリア左にいた乾の元へ。乾がダイレクトで折り返すと、再び岡崎が飛び込んで潰れ役となり、フリーの本田にボールが流れる。本田は、迷わず左足を振りぬき、同点に追いついた。

「格別でしょう。おっさん連中が叩かれ続けたんで。あれは岡崎が前でつぶれてくれて、圭佑に(ボールが)転がって。そういうベテランの選手が得点してくれて。自分のことのようにうれしいですよ。持ってますよね。(本田は3大会連続ゴールですが?)さすが、ワールドカップに愛された男じゃないですか」
 
 長友も称賛した本田のゴールでさらに日本は攻勢に出る。87分、指揮官は乾に代えて宇佐美貴史をピッチに送り出した。「さらに攻める」との指揮官のメッセージは選手たちにも伝わった。
 先発メンバーも、ハーフタイムのメッセージも、切った3枚のカードも、すべてが攻撃的に勝ち切るため。初めから終わりまで、攻撃的であり続けた。

 結局、勝ち越しゴールを挙げることはできなかったが、グループ最強と目される相手に、前のめりに戦い切ったことで日本はさらなる自信を手に入れる。

「勝ち切りたいという後半を考えていました。最後は宇佐美(貴史)か、あるいは抑えにそういう(守備的な)選手という選択もあったんですけど、勝ちに行きたいという選択をしました。そのうえでの勝ち点1なので、に評価したいと思います。次につながる内容だと思います」

 西野監督は試合後、そう言ってセネガル戦を評価した。

 2戦を終えて、日本は勝ち点4でグループHの首位に立つ。日本ーセネガル戦終了後に行われたポーランド対コロンビアは、3-0でコロンビアが勝利したため、日本は次節のポーランド戦で引き分け以上なら2大会ぶりの16強入りが決まる。
 仮に敗れても、セネガルがコロンビアに勝てば決勝トーナメント進出が決定。優位な立場にあるのは間違いない。

「(勝ち切らないと3戦目が敗者復活戦になると言っていたが)そう簡単にいかない。勝ちきって勝ち点6にするのはかないませんでしたが、(3戦目は)敗者復活戦ではないし、3試合目に向けて間違いなく有効な結果だと思います。勝ち切れるということをもたらしたゲームと考えたい。しっかりトップで通過できる状況がまだあるゲームと考えたいと思います」

 ポーランド戦に向けても自信を深めた、このセネガル戦。日本は1位での突破もかけて、28日にポーランドと対戦する。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男/JMPA

■グループH 順位表
1位 日本/勝ち点4(1勝1分け・得失点差+1)
2位 セネガル/勝ち点4(1勝1分け・得失点差+1)
3位 コロンビア/勝ち点3(1勝1敗・得失点差+2)
4位 ポーランド/勝ち点0(2敗・得失点差-3)
※ポーランドの敗退が決定