アルゼンチン

アルゼンチン◎12大会連続17回目:1930、34、58、62、66、74、78、82、86、90、94、98、2002、06、10、14年 / FIFAランク◎5位 / 監督◎ホルヘ・サンパオリ

メッシが率いるアルゼンチンは、前回大会決勝で敗れたリベンジに燃える。86年大会以来の頂点に立てるか(写真◎Getty Images)

短い準備期間で答えは見つかるか

 いまのアルゼンチンは強いのか、弱いのか――。
 ブラジル大会では内容はともかく決勝戦まで勝ち進んだ。その翌年は無敗のまま、16年は全勝でコパ・アメリカのファイナリストになっているのだからポテンシャルが高いのは確かだ。なにしろリオネル・メッシがいる。しかし「何か」が足りない。だから3度も準優勝で終わっている。
 今回の南米予選では敗退寸前まで追い込まれた。セビージャ(スペイン)と契約中だったサンパオリが急きょ呼ばれ、最終節でメッシがハットトリックを決め、74年大会から続いている連続出場をなんとか途切らせずに済んだ始末だ。
 与えられた準備期間が短すぎることから、サンパオリは一からチームを作るのではなく、自分のアイディアとバウサ前監督から受け継いだものの折衷案を練ってきた。カギとなるのはもちろんメッシなので、たとえばフォーメーションも自分好みの3バックにこだわらず、メッシのプレーを邪魔しない4バックを検討している。
 今季のバルセロナで、「完璧な選手」にまた一歩近づいたメッシを擁する以上、期待されるのはメッシが活躍しての勝利。ただの勝利は二の次だ。
 負けた場合、サンパオリは当然叩かれるが、そのときメッシが最高のパフォーマンスを見せていたら監督の責任は重くなる。メッシに輝きがなかったら「使い方が悪い」と責められるだろう。
 今大会の監督32人の中で、最も大きなプレッシャーがのしかかるのはサンパオリに違いない。

文◎横井伸幸

アイスランド

アイスランド◎初出場/ FIFAランク◎22位 / 監督◎ヘイミル・ハルグリムソン

初めてのワールドカップに臨むアイスランド。ダークホースとして旋風を巻き起こせるか(写真◎Getty Images)

最小国はEUROの再現を狙う

 人口約33万人のアイスランドは、大会史上最小の予選突破国としてW杯デビューに臨む。もちろん、単に出場枠のひとつを埋めるためにロシアに乗り込むわけではない。EURO2016でイングランドが餌食になったように、チーム一丸でなり振り構わずに勝利を目指すハードワーク軍団は、格上相手でもしぶとく戦い抜く力を秘めている。
 今大会の予選では、一昨年のEUROで見せたパフォーマンスが偶然ではなかったことを実証した。クロアチア、ウクライナ、トルコといった難敵と同居したグループを首位で突破。得点源のコルベイン・シグソールソンをケガで欠いた状況での予選突破でもあった。
 ベースとなるシステムは4-4-2で、予選で3得点を挙げたアルフレッド・フィンボガソンがFWの軸となる。そして指揮官が好む2トップの相棒は、チーム最大のスターであるギルフィ・シグルドソン。実際にはトップ下的に絡み、攻守が入れ替われば、陣形は4-4-2から4-5-1へシフトする。
 ピッチ中央では、アロン・グンナルソンとビルキル・ビャルナソンのタッグが定番。カーディフとアストンビラで活躍するドイスボランチの他にも、ヨハン・グドムンソン(バーンリー)、ヘルドゥル・マグヌソン(ブリストル)ら、イングランドの1部と2部で“バトル”慣れしている顔ぶれがそろい、対戦国はタフな戦いを強いられるだろう。ビッグネームは不在だが、大番狂わせを演じる可能性は十分。EUROに続く16強入りを成し遂げたとしても、もはや“サプライズ”とは呼べないのかもしれない。

文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍

クロアチア

クロアチア◎2大会連続5回目:1998、2002、06、14年 / FIFAランク◎20位 / 監督◎ズラトコ・ダリッチ

モドリッチやラキティッチら、タレントを擁すクロアチア。初出場した98年大会の成績を超えられるか(写真◎Getty Images)

豪華タレントが並ぶ中盤が生命戦

 初出場で3位につけた98年フランス大会から、W杯常連国としての足場を固めてきた。テンポ良くパスをつなぎ、守っては骨のある戦いを見せるクロアチアのサッカーは、常に見る者を楽しませる。
 主将も務めるルカ・モドリッチが攻撃のタクトを振り、イバン・ラキティッチがダイナミックに絡み、イバン・ペリシッチがスピードを加える中盤には、今日のサッカー界でも屈指の攻撃的MFが並ぶ。この魅力的なトリオが、決定力の高いマリオ・マンジュキッチ、老獪なニコラ・カリニッチをサポートするのだから、ダリッチ監督が採用する4-2-3-1の前線は、競争力の高いグループDの対戦相手にとって脅威となる。
 しかしながら、一方ではメンバーの高齢化を隠しきれず、中には「賞味期限切れ」と揶揄されるベテランがいるチームであることも事実だ。勢いに乗り切れなかった予選での戦いぶりが不安を煽り、負ければ敗退という最終節ウクライナ戦を前に、アンテ・チャチッチ前体制に終止符が打たれた。
 幸い、ダリッチ新監督の下で団結したチームは、予選プレーオフでギリシャを下して5度目のW杯出場を決めた。その流れから前向きな目でチームを眺めれば、20代後半と30代前半が大半を占めるイレブンは、W杯本番で重要な経験値に事欠かない。しかもクオリティーに疑いはなく、GKのダニエル・スバシッチ、CBのデヤン・ロブレンという背骨の底辺だけを見ても、その強固さが頼もしい。中でも期待を担うモドリッチらMF陣が実力を発揮すれば、主導権を握りながら、16強入りの最低限のノルマを達成できるはずだ。

文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍

ナイジェリア

ナイジェリア◎3大会連続6回目:1994、98、2002、10、14年 / FIFAランク◎48位 / 監督◎ゲルノト・ロール

個人戦術に長けたヨーロッパ組がチームの骨格をなし、組織的な戦いを志向。新たなナイジェリアが見られそうだ(写真◎Getty Images)

3本の矢を武器に目指すはベスト8

 スーパーイーグルス(ナイジェリア代表の愛称)は予選でアルジェリア、カメルーン、ザンビアと同じ“死の組”に入りながら、アフリカ最速でロシア行きを決めた。ドイツ人監督ゲルノト・ロール率いるこの代表が、ほんの少し前には欠けていたリアリズム――チャンスやいいプレーを結果に結びつける能力を取り戻した証拠だろう。
 予選では無敗を誇り、長らく弱点のひとつだったディフェンスは堅固さを取り戻した。とはいえ、GKの問題はまだ解決していない。レギュラーだったビンセント・エニェアマが代表を引退し、その後を継いだカール・イケメは白血病と診断されて現在治療中。そんな中、指揮官は本大会のゴールマウスを、19歳の若きフランシス・ウゾーに任せようと考えている。
 ロール監督は就任以降、ヨーロッパで活躍する若い才能を積極的に登用し、代表の若返りを成功させた一方、何人かの経験豊富な選手を残し、彼らには若いチームをサポートする役割を求めている。主将のジョン・オビ・ミケルは、前線のアレックス・イウォビ、ビクター・モーゼス、ケレチ・イヘアナチョという若い3人のアタッカーを操る司令塔として、チームの命運を握る存在だ。
 そろってプレミアリーグでプレーする3本の矢を武器に、昨年11月の親善試合ではアルゼンチンを大いに痛めつけ、本大会での再戦も心理面では優位に立てるはずだ。3月にはポーランドを下すなど結果がついてきており、ナイジェリアサッカー連盟は「ワールドカップ準決勝に進出した最初のアフリカ代表となる」という野望を抱いている。

文◎パスカル・フェレ 翻訳◎木村かや子