ポルトガル

ポルトガル◎5大会連続7回目:1966.86.2002.06.10.14年 / FIFAランク◎4位 / 監督◎フェルナンド・サントス

攻守両面で武器を持つヨーロッパ王者ポルトガル。初優勝を虎視眈々と狙っている(写真◎Getty Images)

エースの得点力と組織的守備が武器

 EURO2016での「サプライズ優勝」以来、ポルトガルは高揚感に包まれている。だが、F・サントス率いるチームが今夏のロシアでも栄光を手にすることになれば、それは2年前のフランスで演じた国際大会初優勝もしのぐ「一大サプライズ」だ。たとえ、あのクリスティアーノ・ロナウドを擁するチームのW杯優勝であっても。
 スイスとの一騎打ちとなった欧州予選では、EURO優勝当時のしぶとさが失われていないことを示した。ホームでの最終節でライバルを2-0で下し、得失点差のグループ首位で厄介なプレーオフに回る事態を回避した。
 予選でチーム最多15得点をもたらしたのは、やはりロナウド。4−4−2システムで前線の相棒となるAn・シルバも上々の9得点で、一大スターが背負うゴールの負担を軽減している。
 後方の守りは非常に固い。予選10試合のうち7試合を無失点で終えている。サントス監督は統制の効いた組織的な守りを基盤として重要視するが、現代表には、CBのジョゼ・フォンテ、右SBのセドリク・ソアレス、GKのルイ・パトリシオら、指揮官が意図する戦い方を実践できる持ち駒がそろっている。残る中盤にも、運動量と創造性がバランスよく共存する。ウィリアン・カルバーリョがチームの腹筋だとすれば、ベルナルド・シルバとジョアン・モウチーニョが中枢神経だ。
 ロシア大会に臨むポルトガルは、2年前までの「機能性+C・ロナウド」のようなチームよりもスタイリッシュなチームになっている。スペインとのトップ2が見込めるグループに入ったこともあり、ベスト4を期待してもいいだろう。

文◎クライブ・バッティ 翻訳◎山中 忍

スペイン

スペイン◎11大会連続15回目:1934、50、62、66、78、82、86、90、94、98、2002、06、10、14年 / FIFAランク◎10位 / 監督◎ジュレン・ロペテギ

無敵艦隊の準備は着々と進んでいる模様だ。2008年のEUROからメジャータイトルを3連覇した黄金時代の復活なるか(写真◎Gettey Images)

再興へ向けたプロセスは順調

 ディフェンディングチャンピオンとして臨んだブラジル大会では、前大会で勝っているオランダ、チリを相手に連敗し、早々に敗退が決定した。そればかりか、オランダ戦では守護神カシージャスが凡ミスで失点し、チリ戦では2010年の戴冠のキーマンであったシャビが先発落ち。区切りとして分かりすいのは、16年のユーロ敗退とデルボスケ前監督の退任だが、08年のEURO優勝から始まったの黄金時代は、すでにこのとき終わっていたのかもしれない。
「スペイン再興」を望む連盟は、世代別代表で結果を出してきたロペテギを後任に選んだ。しかも、「わずかな時間で」という条件をつけて。
 厳しい難題を課せられたロペテギ率いる新生スペインだったが、16年9月の初陣から、予選だけでなくイングランドやフランス、ドイツ、アルゼンチンといった強豪国との親善試合でも負け知らず。大会前の時点では再興へ向けたプロセスの少なくとも50パーセントは達成されたと言えるだろう。
 フォーメーションもプレースタイルも、基本的には以前のデルボスケ体制下と変わらない。ただし、選手のポジショニングを細かく調整し、ボールホルダーへのサポートや、自陣を固める敵への対応を変えながら、有効的な攻撃を見せ続けている。チームの要である中盤にはイニエスタが君臨。ロペテギが就任して以来、全試合に招集してきたチアゴ・アルカンタラも舵を取る。世界屈指の厳選されたアタッカー陣がそろう。
 ロペテギの代表が、頂点への残り50パーセントのプロセスを、ロシアで完遂する可能性は十分にある。

文◎横井伸幸

モロッコ

モロッコ◎5大会ぶり5回目:1970,86,94,98年 / FIFAランク◎41位 / 監督◎エルベ・ルナール

86年大会以来の決勝トーナメント進出はなるか。指揮官の手腕に期待がかかる(写真◎Getty Images)

白い魔術師率いるダークホース

 スペインやポルトガルといった強豪国に加え、アジアの曲者であるイランと同じグループBに入ったモロッコ。下馬評は決して高くないものの、攻守に武器を持つ北アフリカの雄は、今大会で『驚きの代表チーム』となるかもしれない。
 過去にアフリカ選手権を2度制し(2012年のザンビアと2015年のコートジボワール)、『白い魔術師』の異名を持つルナール監督は、MFカリム・エルアフマディ、ユネス・ベルハンダ、ハキム・ジイェフ、FWハリド・ブタイブら、ヨーロッパのリーグ戦で活躍するタレントをうまくまとめ上げてきた。なかでも強い印象を与えるのがブタイブ。最終予選でチーム最多の4得点を決め、エースFWに名乗りを上げた。
 また、今年1月の『アフリカ・ネーションズチャンピオンシップ』(アフリカ大陸でプレーしている選手のみが参加できる大会)で9ゴールを挙げ、優勝に貢献した若手ストライカーのアユブ・エルカービも注目選手のひとりだ。好調を維持しており、本大会では『ワンダーボーイ』となりそうな気配も漂わせている。
 そして、最大の目玉は最終予選6試合を無失点でしのいだ“鉄のディフェンス”だ。堅固な後衛部隊の中で、キャプテンを務めるベナティアは必要不可欠な存在。CBコンビを組むサイスとともに守備陣を統率する。
 今年3月時点で12試合連続負けなし(10勝2分け)。攻守両面で安定感が増している北アフリカの雄は、大舞台に向けて着実に世界を驚かせるチームに仕上がってきたと言えるだろう。

文◎パスカル・フェレ 翻訳◎木村かや子

イラン

イラン◎2大会連続5回目:1978,98,06,14年 / FIFAランク◎37位 / 監督◎カルロス・ケイロス

アジア予選で見せた堅守は通用するか。自慢の守備力が16強入りの鍵になりそうだ(写真◎Getty Images)

好サイクルに乗り、チームの基盤は強固に

 2大会ぶりに出場した前回W杯では、アルゼンチンを相手に善戦するなど、1分け2敗ながらも内容的には奮闘していた。そこでサイクルは途切れず、最終章へと入っていった。
 ケイロス監督は、一度はブラジルW杯後にイランを去る腹を決めた。だがイラン連盟は、高い要求で連盟やクラブと衝突することも少なくなかった指揮官に、退任を翻意させることに成功。お互いに、良い仕事をしたいという思いに変わりはなかった。
 選手の顔ぶれは徐々に変わっていった。イラン史上最多キャップを誇るネクナムも、15年のアジアカップを最後の舞台としてフェードアウトしていった。
 それでも、ケイロス監督が植え付けたチームプレー、そして堅固な組織は受け継がれ続けた。
 W杯アジア最終予選では、10試合を戦って失ったのは、わずかに2ゴールのみ。実に9試合を完封して、首位通過を果たしたのだ。
 アジアレベルでは体格で優位に立てるという側面もあるが、組織としての守りもレベルを上げている。さらに、攻撃陣にはヨーロッパの高いレベルでプレーをする選手も少なくない。
 だが、ケイロス監督は謙虚さを失わない。世界トップレベルとの差の大きさを感じつつ、「イランサッカー界の歴史における最大のチャレンジ」とグループ突破を目指している。
 その大目標に向け、まずは初戦のモロッコ戦に照準を合わせている。ここでイラン史上2つ目のW杯での白星を挙げたなら、それだけでも十分な成功だ。

文◎杉山 孝