大島僚太は、西野ジャパンの初陣となるガーナ戦で先発し、3-4-2-1システムのドイスボランチの一角で90分間プレーした。結果、指揮官が同試合のキープレーヤーの一人に名を挙げるなど、アピールに成功。翌31日に発表されたロシア・ワールドカップ出場メンバーに名を連ね、日本代表の一員としてロシアへ向かうことになった。

※ロシアW杯のメンバー入りを果たした大島僚太(写真◎福地和男/BBM)

「外せないキープレーヤーだった」(西野監督)

0-2と完敗し、見るべきところに乏しかったガーナ戦の日本代表において、大島の存在はポジティブな要素の一つだった。最終ラインからボールを引き出し、ピッチ中央からサイドへボールを配って攻撃を促す。何度か見せたプレーメーカーとしての才は、始動間もない西野ジャパンの中で、すでに欠かせないものになっている。

ガーナ戦後の記者会見で西野監督は試合中の交代策を問われ、次のように大島に触れた。
    
「今日はすべてプラン通りに交代を考えていました。トライさせたい選手と時間を。ただ6人をそれぞれスイッチしていくと、試合が成立しない状況になる。なので交代は3回で6人。短時間でも試合の中で確認したい選手、最後は井手口を。当初は大島を(下げることを)考えていました。ボランチ2人を中盤にする形で。ただ、攻撃的なところで大島は、展開力とプレーメークに関して外せないキープレーヤーだった」

今回の代表合宿に招集された西野ジャパンの〝ボランチ”候補は大島を含め、7人。ボール回収に長けた山口蛍、縦パスで攻撃を加速させる柴崎岳、予選突破に貢献した機動力に優れる井手口陽介、上背がありボール奪取能力の高い三竿健斗、さらにガーナ戦で3バックの中央を務めた主将の長谷部誠や同じくCBのほかディフェンシブなポジションを複数をこなす遠藤航など、ライバルがひしめいていた。

その中でも、攻撃を組み立てるという役割において大島はトレーニングから際立だった存在感を示していた。ガーナ戦翌日に開かれたロシア・ワールドカップメンバー発表会見の席上でも西野監督は、本番で目指す攻撃について触れながら大島についてコメントを残した。

「(ガーナ戦は)センター(中央)で大島がボールをよく動かしていましたけど、センターでボールを保持することができれば、サイドからのアタックも当然、増えてきます。もちろん、それだけでは単調になる。選手たちのイメージはあるんですけど少しメンバーが変わると難しい部分もあった。共有するようにしていきたい」

指揮官の頭の中には攻撃のタクトを振るう大島の『像』がしっかりとインプットされているのだろう。大島が周囲の良さを理解し、周囲の選手も大島の持ち味を理解したとき、西野監督が描いている絵がピッチに表れることになる。

ロシア・ワールドカップ、メンバー発表会見の数時間後、川崎市内で取材を受けた大島

意見を言って相互理解を深めたい

ロシアに行く23人を西野監督が発表した会見から2時間後、川崎市内で取材に応じた大島は、メンバーに選ばれたことについて、そして指揮官から高く評価されていることについて、率直に自分の思いを語った。
 
「やっぱり昨日の試合のこともありますけど、内容も結果もと考えると…(代表に対する)不安な声をどうしても耳にしますし、その中で(メンバーに)選らんでもらえて、そういう声を払しょくするために全員で力を合わせてやっていきたい。方向性(を合わせること)だったり、それは全員が思っていると思いますけど、そのことを選出されたときには強く感じました」
「(西野監督がガーナ戦では途中で外せない存在だったと話したことについて)。6人交代していたからでは? 試合展開が負けていたというのもありますし、僕自身は攻撃の部分を評価してもらったと思っているので、(交代がなかったのは)負けていた展開で『攻撃に』というメッセージだったと思います。でも、それなのに点が入らなかった、追いつけなかったというのは情けないなと思います」
 
メンバー入りした喜びはもちろんある。だが、本大会の抱負を語るとき、口をつくのは悔しさや課題だった。

「(ガーナ戦も)手応えよりもできないことのほうに目がいってしまって。こうしたほうが良かったのかな、というのが出てくるので。それをピッチ上で修正できなかった自分の主張力が足りないところは改善しなければいけないと思っています。個人としてはボールを失うシーンもありましたし、相手ボールのときにどこまで寄せるか、寄せないか、そのバランスを見極めなければいけない。相手の身体能力に対しての付き合いかというか、そういう部分をもう少し整理したいと思います。チームとして(最終ラインのDFを)3枚でやるのか、4枚やるのかという部分はありますけど、3枚でやるときのビルドアップの方法というのは1試合やったことである程度イメージは持てたので、そこは合宿が始まってから統一できると思っています」
 
チームは6月1日に再集合し、2日に最初の合宿地、オーストリアに向かう。そこでガーナ戦で出た課題を踏まえ、修正・改善に取り組むことになる。重要になるのは、大島自身が言う「主張力」だろう。西野監督も選手の意見交換を促し、チームを構築していくと明言する。
 
「国を代表して戦う大会ですし、責任も重圧もありますけど、その中で自分を出すと、そういうものをしっかり示したい、勝ちにいきたいと思います。同じJリーガーもそうですし、競い合っている仲間を代表して、それからプロを目指して頑張っている子どもたちに対して、勝ってしっかりと示したいと思っています」
 
自分を出す。大島に、その覚悟はできている。
  
取材◎佐藤 景 写真◎福地和男、BBM

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