“今まで通り”では許されない

2018年は関川郁万にとって、ほろ苦いスタートとなった。
「3年生にとって最後の大会なので、勝って終わりたかったけれど、これは結果なんで…」
そう肩を落としたのは、高校選手権の決勝・前橋育英戦(●0-1)の直後だった。

準決勝まで無失点で勝ち上がるも、決勝で前橋育英に許した大会唯一の失点が、流通経済大柏に敗北という結果を強いた。センターバックとして、失点の責任を噛みしめていた。

この試合が高校生活最後となる先輩たちのために、どうしても花道を作りたかったのだろう。前半には右足を傷める場面もあったが、立ち上がり、足を引きずりながらも相手に立ち向かった。その並々ならぬ闘志を、試合を通じて随所に示していた。

ひとつ年上の先輩たちは、関川ら後輩たちにいくつもの置き土産を残した。昨夏のインターハイでは優勝という結果で頂点を見せ、12月に広島で行なわれた高円宮杯プレミアリーグ参入戦では、大阪桐蔭高(△1-1・PK5-4)と徳島ユース(○2-0)を撃破し、来年度のプレミアリーグ昇格をもたらした。

高校選手権決勝での敗戦もまた、2年生にとって翌年度大会に先輩が果たせなかった“冬の日本一”を取るための思いを、より一層強くさせる土産になったのかもしれない。
「戻ってこなければいけない場所」
そう言葉を発した関川は、早くも1年後のリベンジに燃えている。

だが、まず照準を合わせるのは4月から始まる高円宮杯プレミアリーグだ。高体連のチームのみならず、Jクラブのユースチームもしのぎを削る。ディフェンディングチャンピオンのFC東京U-18をはじめ、清水ユースや青森山田、さらに同県のライバルである市立船橋と柏U-18もいる。新チームでは関川らが中心となって、2年ぶりに高校生年代最高峰のリーグ戦に挑戦する。

ここまで引っ張ってくれた先輩たちは、もういない。それだけに、最後の1年への思いは強い。
「俺が決めて勝つとか、俺が守るとか、次はもう自分のことだけを考える学年ではない。最終学年として、チーム全体を引っ張っていかなければいけない存在になるので、やはり自分勝手な部分はなくさないと。(高円宮杯プレミアリーグからプリンスリーグへと)チームは落ちちゃうんじゃないかな、という危機感はあります」と、“今まで通り”では許されない自覚と覚悟も持ち合わせている。

「目標は変わらないですよ。すべての大会で優勝しかないですね」
先輩たちとともに味わった夏の歓喜と、冬の屈辱を胸に——。
前人未到の高校3冠獲得へ、超高校級センターバックは、流通経済大柏での最後の1年を迎える。

 
文◎小林康幸 写真◎Getty Images
 

◎関川郁万
せきがわ・いくま/2000年9月13日生まれ、FC多摩ジュニアユース出身。空中戦の強さが武器のセンターバック。昨年9月にはJ1鹿島の練習にも参加した。180cm、72kg