■J1リーグ 第1節
磐田 0-3川崎F
得点者:(磐)
    (川)中村憲剛、谷口彰悟、エドゥアルド

王者として迎えた開幕戦

昨季、クラブ史上初めて栄誉に浴した川崎Fにとって、王者としてJ1開幕戦を迎えるのは初めてのこと。それだけでも大きなプレッシャーがかかっていたはずだが、2月10日のFUJIゼロックススーパーカップから続くACLの2試合(2月13日の上海上港戦、2月20日の蔚山現代戦)と、公式戦3連敗。この日の開幕戦は"余計に″重圧を感じる状況だった。

「選手はプレッシャーのある中で迎えた試合だと思う」(鬼木達監督)

普段通りではない空気の存在を、指揮官も感じていた。
そんな重苦しさを打破したのが、中村憲剛だった。

24分、エドゥアルド・ネットがゴール前に送ったクロスに、磐田の守備陣よりも早く反応し、斜めに走り込んでジャンプ一閃。ドンピシャのタイミングでヘッドを決め、名手カミンスキーが守るゴールを破った。

「来いって思ったら本当に良いボールが来た。ネットがボール持ったときににフリーで、自分もフリー。あんなにフリーになる場面はそんなにないので。それは知念やアキ(家長昭博)、悠(小林)が(相手を)引っ張ったりすることで自分が空いたと思うので。来いって思ったら良いボールが来た。当たれと思ったらゴールになった(笑)。意外性というのもそういう意味では大事だと思う」

昨季、リーグ随一の堅守を誇った相手から奪ったゴールは、王者の"硬さ″を取ることにつながった。チームはそこからボールを積極的に動かし、磐田守備陣のスキを巧みに突いていく。2点目が生まれたのは、43分。右サイド深い位置で中村憲剛がクロスを上げると、セットプレーの流れで前線に残っていた谷口がヘッドを決めた。

さらに45分、知念慶が倒されて得たFKの場面で、またも中村が良質のボールをゴール前に送る。エドゥアルドが豪快なヘッドで3点目を挙げた。拮抗した展開も予想されていたが、前半のうちに川崎Fが3-0とリード。その立役者は1得点2アシストの中村だった。

「(チームとして)気持ちも入ってましたし、すごく(チームが)まとまっていましたし、球際のところとか、ピンチがあっても最後まで体を張ったりとか、やっぱりこういう勝ち方をするとチームの士気もグッと上がるし。これ以上ない結果ですけど、まだまだ詰めれるところもあると周りの選手と話しています。やっぱり勝ってね、勝たないとなかなか前に進まないので。負けると沈んで行っちゃうので」

この勝利を、王者が王者らしさを取り戻す契機にしたいと中村は繰り返した。そして破格のパフォーマンスを披露した自身については「3点に絡むことはそんなにないので。ハードルがまた上がるな、と(笑)」。

シーズンインから続いていた公式戦の連敗を止め、J1連覇に向けて最高のスタートを切った王者・川崎F。その中心には、プロ16年目を迎えたバンディエラがいた。

取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE PHOTOS