強心臓に曺貴裁監督も感嘆

湘南への内定と特別指定選手の登録が発表された8日後だった。2017年8月5日、J2第26節松本戦の先発メンバーには、松田天馬の名前があった。

「正直、がちがちでしたね」
前半こそ本人が明かすように緊張が見えたものの、後半に落ち着きを取り戻すと、随所に持ち味を発揮。堂々とボールをさばき、チャンスメークの役割を果たした。貴重な勝ち点3の獲得に貢献し、本拠地に詰めかけたサポーターからは大きな歓声を浴びた。

試合後、曺貴裁監督は164センチの大学生を称えた。
「高校、大学でメンタルを鍛えられているので、全然びびっていなかった。きょうの試合でそれを証明したと思う。小さくてもサッカーができるタイプの選手なので、模範になってほしい」

幼い頃から背が低く、常に考えてプレーしてきた。海外サッカーを見ても、目がいくのは低身長の選手ばかり。バルセロナのイニエスタ、レアル・マドリードのイスコらのプレーを研究し、ボールの置き所、パスをもらう前の動きなどを参考にしてきた。J2のデビュー戦でも足を止めずに動き回り、わずかな隙間でパスを受けると、くるりと反転して積極的にゴールへ向かった。
「慣れれば、もっとやれる」
手応えを得ていた。

ひと足早くJ1で活躍している同世代の川辺駿(広島)らとの対戦を心待ちにしている。「負けたくない」という気持ちは強い。

鹿屋体育大での4年間で自信をつかんだ。東福岡高時代は遠慮がちになることもあったというが、大学では自らゲームを動かす経験を積んだ。小さな体で守備をすることも覚えた。それでも、「まだまだ成長したい」。だからこそ、厳しい練習を課すことで知られる湘南を選んだのだ。

「球際でもっと強くならないと。湘南では攻守両面で中心になりたい」

 
文◎杉園昌之
 

松田天馬[鹿屋体育大4年/MF]
まつだ・てんま/1995年6月11日生まれ。熊本県出身。東福岡高時代に全国高校選手権に出場し、鹿屋体育大へ進学する。今年度はユニバーシアード日本代表としても活躍した。164cm、62kg