第96回全国高校サッカー選手権大会 準決勝@埼玉スタジアム 流通経済大柏 1-0 矢板中央
当たった瞬間、入ると思った
流通経済大柏を10年ぶりの決勝進出に導くゴールは、埼玉スタジアムがどよめく圧巻のボレーから生まれた。
75分、加藤蓮が右サイドからペナルティーエリア内へ走り込むと、近藤立都の山なりのクロスを待ってましたとばかりに、右足で豪快に振り抜いた。
「当たった瞬間、入ると思った。芯でとらえたので。ボレーシュートは得意なんです」
途中出場でヒーローとなった3年生は、満面の笑みで振り返った。本田監督からは「あれはまぐれ。次はできない」と冗談交じりに言われていたが、本人は笑ってそれを否定した。「次も決めますよ」。
小学生の頃から徹底したリフティングの練習を重ね、ボールをミートする感覚をつかんだ。練習でもボレーシュートを頻繁に決めているという。チームメイトたちも、それをよく知っている。
ゴールをお膳立てした近藤は「蓮なら決めると思った」とさらり。ただ、「この大舞台でやるのはすごい」と度胸には脱帽した。クロスを受けた瞬間はフリーでトラップする余裕もあったが、大胆不敵な判断が奏功した。
「自分が仕留めて、1-0で勝つ」という強い思いを持っていた男に迷いはなかった。今大会3得点のどん欲なアタッカーは、決勝ゴールの余韻に少し浸ると、すぐに8日の決勝へ目を向けていた。
「ラスト1試合、走り抜く。次で負けたら意味がない。10年ぶりもうれしいけど、自分たちのために優勝したい」
夏冬の高校2冠へ意欲をみなぎらせた。
文◎杉園昌之 写真◎Getty Images