Jクラブ関係者の評価はすこぶる高く、才能は申し分ない。
2度の大ケガで約1年半を棒に振ったストライカーは、どこまで復活できるのか。

「100%までもう少し」
完全復活に期待の不屈の点取り屋

ポテンシャルの高さは、大学サッカー界で指折りとも言ってもいい。東福岡高時代から独力でゴールを奪えるストライカーとして注目され、明治大ではプレーの幅を広げた。

2歳上の和泉竜司(現名古屋)を手本とし、中盤の組み立てにもうまく入れるようになった。タイミング良く裏へ抜け出すセンス、多彩なシュート技術、柔軟なポストワーク、そのどれもが一級品。Jクラブのスカウト陣も木戸の才能には太鼓判を押していたが……。

大学2年の夏に総理大臣杯で右ヒザ前十字じん帯を損傷し、約9カ月間の離脱。復帰して約3カ月後、再び悪夢に見舞われる。奇しくも同じ大会で、次は左ヒザ前十字じん帯を負傷し、約8カ月間もピッチを離れることに。「大学生活の半分くらいはリハビリしていた」と苦笑する。

それでも、2度の苦難を乗り越えて、今年5月に再び復帰する。いまは自らの体と向き合うことを忘れない。
「練習前の準備、アフターケア、普段の食事なども徹底するようになった。休む勇気も必要。無理はしない」
今季から主将を務める男は淡々と話す。将来について悲観することも、楽観することもない。筋肉に覆われたヒザに目を落とすと、「自分と向き合う時間が長かったので」と静かに笑う。

ピッチ外から試合を観察することで、サッカーへの理解もより深まった。
「イメージはふくらませながら見ると、いろいろなことに気がついた。復帰して練習に入ったとき、おかげで頭がすぐに働いた。外から見ることが、すごくタメになったと思う」

その証拠に関東大学リーグで復帰すると、要所で別格のプレーを披露。浦和との練習試合でも、プロのDF相手に圧巻の速さで局面を打開し、鋭いシュートを放っていた。
「まだ7、8割ですかね」
ヒザと相談しながら、徐々に本来の姿を取り戻しつつある。今年8月のユニバーシアード代表はケガのため辞退したが、9月の総理大臣杯、秋のリーグ戦には照準を合わせてくるはず。

まだ完全復活を印象付ける活躍は見せていないが、その気配は漂っている。前期リーグのある日、ヒザを休めるためにメンバー外となり、ピッチ脇で真剣な眼差しで試合を追っていた。半信半疑なプロ関係者の声も聞こえるが、本人に焦りはない。

「100パーセントまではもう少し」
どん底から這い上がってきた男は、腹がすわっている。この秋から本当の巻き返しが始まる。
 

(取材・文◎杉園昌之)
 

【プロフィール】
きど・こうき/1995年6月28日生まれ。中学校までは熊本で育った。名門の東福岡高へ進み、エースストライカーとして全国高校選手権に出場した。U-18日本代表経験あり。176㎝、75㎏

 
※サッカーマガジン10月号掲載の大学支局を再構成し掲載しています。