8月31日、ワールドカップ(W杯)ロシア大会のアジア最終予選が埼玉スタジアムで行われ、日本代表はオーストラリア代表を2-0で下し、9月5日(現地時間)に敵地で行なわれるサウジアラビア戦を残し、6大会連続6回目のW杯出場を決めた。

若きサムライが先発起用に応える

日本は序盤から両サイドを中心に攻めたものの、決定的なチャンスをなかなかつくれなかった。均衡を破ったのは、約1年ぶりに先発に抜擢された22歳の浅野拓磨だった。41分、一瞬棒立ちになった相手DFの裏を取り、長友佑都からの鋭いクロスを左足のインサイドできれいに合わせた。

ゴールネットが揺れたことを確認すると、青に染まったゴール裏に向かって、お決まりの「ジャガーポーズ」で喜んだ。「(長友)佑都さんがいいボールを上げてくれたので合わせるだけでした」。

1-0のまま折り返すと、後半は相手の勢いに押される時間が続いた。それでも、GK川島永嗣を中心に瀬戸際で踏ん張り、ゴールを死守。70分からは06年W杯から日本を苦しめてきたオーストラリアの切り札、ティム・ケーヒルが入り、相手も攻勢を強めてきたが、吉田麻也、昌子源のCBコンビが体を投げ出し、耐えてしのいだ。

流れを変えたのは、またもリオデジャネイロ五輪世代だった。左サイドで途中出場の原口元気が粘って敵陣内でボールを保持し、体勢を崩しながらもパスを出すと、後方から走り込んできた21歳の井手口陽介はスピードに乗ったままドリブルで中へ切れ込む。82分、ペナルティーエリア外から豪快に右足を振り抜くと、ボールはゴール右上へ一直線。「入るとは思わなかった。たまたまです」と淡々と振り返ったが、迷いはなかった。

2点リードしてからも、守備陣は集中を切らすことなく、攻撃陣も高い位置からのプレスを緩めることはなかった。終了の笛が鳴り響くと、5万9492人が詰めかけた埼玉スタジアムが歓喜に沸く。過去のW杯予選で一度も勝っていなかった天敵のオーストラリアに完勝し、W杯行きの切符をつかんだ。

試合後、主将の長谷部誠は大歓声を浴びながら、ピッチ上でマイクを向けられると、「(W杯最終予選の初戦に敗れたチームは出場権を獲得できない)ジンクスを覆せた」とほっとした表情を見せた。それでも、予選突破は通過点。06年、10年大会を経験している歴戦の雄は、「また新たな戦いが始まる」とすぐにロシアに目を向けていた。

(取材◎杉園昌之)