今季はEASTを舞台に戦う、京都U-18の不動の守護神に迫る。
身近な存在が、ここまでの自身の成長に大きく影響したという。

兄の背中を追い続ける最後方のゲームメーカー

「優勝したら、みんなの人生が変わると思うんですよ。だから、僕たちは絶対に優勝したい」
京都U―18のキャプテンを務める若原の言葉は、決意に満ちていた。

もちろん、優勝という結果は、選手にとって輝かしい実績となるだろう。だが、若原の言葉の真意は、もっと深いところにあった。
「優勝したら、みんな笑顔になって、もっとサッカーが好きになる。だから、もしもその後にサッカーを続けられなくなっても、たぶんサッカーに関する仕事に就くと思うんですよ。みんなのサッカー人生は、もっと幅が広がっていく」と、優勝がもたらす効果を思慮深く考えていた。若原にとっての『優勝』は、単に結果のひとつとして意味があるわけではなく、その後の人生を左右するほど大きなものなのだ。

若原がそうした考えを抱くようになったのは、3学年上の兄の姿がきっかけだったという。「お兄ちゃんが大会で優勝したとき、チームのみんなが笑顔になって。そういうのを見てきた」と、感慨深そうに振り返る。同じ京都の下部組織でGKとして育ち、現在は立命館大学でプレーする兄が歩んできたサッカー人生は、若原の指標ともなっていた。「お兄ちゃんが、僕のサッカー人生を示してくれている感じですね」と、その存在の大きさを感じている。

兄から教えられたのは、勝利の喜びだけではない。若原の特長でもある、相手FWとの1対1で見せるシュートストップ技術も、兄のプレーを見ながら身に付いたという。
「お兄ちゃんは1対1がうまいので、それを真似しています。良い見本でもあるので、真似をしていたら、自分の持ち味にもなりました。もともと、サッカーを始めたのもお兄ちゃんの影響なので、いつも感謝しながらプレーしています」と、代表GKにまで上り詰めた自身の成長過程を明かした。

そんな若原にはもうひとつ、GKとしての持論がある。
「GKはゲームメーカーだと思っています。自分からビルドアップをしたり、コーチングでみんなを動かしたりするので」と、ゴールを守るだけのポジションでないことを強調する。

さらに、「自分の意見だけを押し通すんじゃなくて、周りの意見を尊重してプレーにつなげることが大切」と、チームのまとめ方も心得ている。キャプテンであること以上に、最後方に構えるGKとして、ピッチ内で担う役割の大きさを認識しているのだ。

「GKの存在は一番大きいと思います。ゴールを守ることだったり、最後の要となったり、チームをまとめたり。だから、そういう質をもっと上げていかないといけない。そして、みんなの人生を変えるためにも、僕自身の人生を変えるためにも、優勝したい」

兄の背中を追い、GKとしての新たな境地を見いだした17歳は、頂点へ向け歩みを止めない。
 

(取材・構成◎小林康幸/サッカーマガジン編集部)
 

Profile◎わかはら・ともや/1999年12月28日生まれ、京都U-15出身。世代別代表に名を連ね、2016年にはAFC・U-19選手権の優勝メンバーとなった。185cm、82kg
 

※サッカーマガジン9月号掲載の高校支局を再構成し掲載しています。