2017.06.25 明治安田生命J1リーグ第16節
鹿島アントラーズ 2-0 アルビレックス新潟
文◎小林康幸(サッカーマガジン編集部)
世代屈指の守備職人
「中盤でも、左右のサイドバックでも、センターバックでも、どのポジションでもできる選手」
新潟を率いる呂比須ワグナー監督は、高卒ルーキーの原輝綺をそう評価する。
昨年9月、クラブから加入内定が発表された際にも、「正確なテクニックと状況に応じた判断力に優れ、守備的ポジションであればどこでも担うことができるユーティリティープレーヤー」と紹介された。
開幕から指揮を執っていた三浦文丈前監督のもとではボランチや左サイドバックとして、後を継いだ呂比須監督のもとでは主に右サイドバックとして、高卒1年目ながら定位置を得ている。16節までで欠場したのは、U-20ワールドカップに日本代表の一員として出場するためにチームを離れた3試合のみ。もはや、新潟にとって不可欠な存在だろう。
原にとって、この1年間はまさに激動だった。
ちょうど1年前の夏、市立船橋高校のインターハイ優勝に貢献し、大会の優秀選手にも選ばれた。世代屈指の“守備職人”として注目を浴び、SBSカップに出場するU-19日本代表に選出され、代表での戦いが始まった。10月にはAFC・U-19選手権に出場。チームは史上初めてアジア王者となり、今年5月に韓国で開催されたU-20ワールドカップでは、日本が戦った全4試合に出場した。
実力不足を痛感
わずか1年の間に、数々の栄光と、多くの経験値を手に入れたそのキャリアは、順風満帆と映る。だが、原自身はジレンマを抱えていた。
「U-20日本代表とアルビレックスとでは役割も違うので、(自分の経験などを)なかなか良い方向に持っていけていないと思う。成長していると実感する部分もいくつかはあるけれど、まだまだ課題を改善しきれていない」
今季、16節を終えて新潟が得た勝ち点はわずかに「8」。開幕戦から波に乗れず、最下位に低迷しているなかで、自身のパフォーマンスにも納得できずにいる。
「自分が試合に出て、何とかしてやろう、という思いもあるけれど、何もできていない。もっとチームを助けられる選手にならないと。日々、そう思って努力はしていても、自分がこのチームでプラスになっていることは、あまりないと思う。プラスになることを出していけるように、やっていかないといけない」
16節で昨季王者の鹿島に敗れた後も、「まだまだ足を引っ張ってばかり。実力不足」と肩を落とした。それでも、指揮官の評価は揺るがない。
「まだ18歳。これから伸びていく選手だと思う。代表クラスの選手だし、これからの期待も大きい」と、呂比須監督はその才能と、豊かな将来性を強調する。さらに、「右サイドバックとして、ボールを持つときには前を向いて、しっかりと正確なパスを出せる。スピードもあるので、オーバーラップもできる」と、サイドバックとしての原の持ち味を絶賛する。
原も、「最初はボランチで出ていたけれど、右サイドバックも好きなので、このポジションを極めていきたい。もっと攻守でボールに関わって、最後は自分が(相手を)制圧できるような選手になりたい」と意欲を口にする。
「自分はもっと成長しないといけない。まずはしっかり、一つひとつステップアップしていきたい」
新潟で試合に出場している責任と活躍への決意を胸に、18歳はさらなる進化を目指す。