6月20日、渋谷の表参道から少し住宅街に入った、いわゆる“裏原宿”の一角がにわかにざわついていた。ざわめきの発信源は、ファッション誌の編集者や、読者モデルとその子供たち。こ洒落た服装で片手にはウエルカムドリンクを、もう一方の手にはマカロンをつまんで談笑している。

「来ちゃいけない場所に来ちゃったかな……」

地味なスーツに身を包んだスポーツ総合出版社の営業担当など居場所はないように感じられるほど、そこは洗練された空間だった。

ファッション誌の関係者と思われる人がしきりにスマホで撮影していた

会場の端にはオシャレなフード&デザートが並ぶ

訪れたのは2017「アシックス」ブランドExhibition&Launch Partyと題した、ご存じアシックスの新ブランド発表の場だ。

アシックスと言えば、日本が誇る老舗スポーツメーカー。デザイン性の高い外資ブランドと比べ、品質で勝負してきたモノづくり職人のイメージが強い。そんなアシックスが、トレーニングアパレルのジャンルで、これまでになかったデザイン性に富んだ商品を展開するという。

これまでのアシックスのイメージとは異なるデザインのアパレルが並ぶ

ウイメンズのラインナップも多い

トレーニングウエアに合わせたシューズも展示

今回のブランド立ち上げに関わったアシックスの横山順一氏が、立ち上げの狙いについてこう語っている。

「ブランドのコンセプトは“ADAPTABLE(アダプタブル=順応する、適応する)”。われわれも、これまでのブランドイメージだけにとどまっていては、成長はありません。成長途上と思われがちのランニング市場も、今後は停滞すると見ていますから。これまでリーチできなかった方々のニーズにも順応していく。われわれは挑戦し続けますよ」

この日に至るまで、2年間の月日を費やしたという。デザインチームも刷新し、社内の体制も、営業方法も、販売経路も大きく変えた。社内を含め、これまでのアシックスに思い入れのある人からの抵抗も少なからずあった。それでもブランド立ち上げまで漕ぎ着けられたのは、モノづくりの原点とも言える「品質勝負」という太い幹は持ち続けているからだろう。

会場を訪れたアスリート。右から大迫勇也(サッカー)、青木智美(競泳)、篠山竜青(バスケット)。彼らは斬新なデザインに驚きつつも「とにかく着心地が良い」と品質を絶賛していた

裏原宿のオシャレな空間と、頑固な職人の情熱。およそ混じり合わない2つの要素が融合し、順応する。イノベーションとはそんなときに起こるのかもしれない。

老舗アシックスの新たなる挑戦。新ブランドのトレーニングアパレルは、今年7月中旬からアシックスストア、オンラインストア、全国のスポーツ用品店で販売が始まる。

商品に関する情報は…
http://www.asics.com/jp/ja-jp/fitness-explorer/